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【コウモリの会版】
コウモリ観察会実施ガイドライン
(平成12年7月9日制定)
1・目的
コウモリは、長い間多くの方々に誤解と偏見により良くない生き物と思われてきました。しかし、いろいろな方々の努力で少しずつではありますが、本当の姿への理解が進んでいることも事実です。
私たちコウモリの会でも、多くの方々にコウモリの本当の姿を知ってもらおうと、コウモリフェスティバル等の催しを行ってきました。そして、その際に実物を見てもらうことの重要性等から、必ずコウモリ観察会も実施してきました。コウモリ理解のためのこのような試みは、少しずつではあるけれども確実に成果をあげうるものと確信しています。
しかし、1年に1回しか開かれないコウモリの会が中心になって行う観察会ではその効果は、スローすぎることも事実です。
一方、現在各地でコウモリの観察会が開かれるようになっています。そこでコウモリの会会員が各地で行うコウモリ観察会に「コウモリの会後援」と銘打って行えるようにして、人を集めやすくするなどの効果から、少しでもコウモリへの理解者を増やせるようには出来ないかと考えました。
そこで、コウモリの会として後援してもいい観察会の条件(以下ガイドライン)を作成し、それに従って行われるものについては、「コウモリの会後援」の名前の使用をして頂こうと思います。
2・ガイドライン
「1」:事前準備
- (A):保険への加入
たとえ参加費は取らないのであっても、必ず保険へは加入できるよう保険料の徴収を行うなど(または主催者の負担等)して万が一の場合に備える。
- (B):所有者への事前説明
観察会を行う場所が、他人の所用物であったりまたはその近くである場合は、事前に観察会を行う旨を説明し了解を取っておくなど工夫した配慮をする。
また、その場所を研究対象地にしている人がある場合は、了解を得て行うこと。事後承認や見切り発車で決して実施しない。(その場所の研究者の了解が得られない場合は、観察会は決して実施しないこと)
- (C):危険性の予知
観察会場所の事前調査等を行い、危険な場所(溝や崖・階段)での事故や交通事故等の問題の起きない予防措置などの工夫をする。
「2」:観察会の前に
- (A):レクチャーを行う
実際の観察の前には必ず、コウモリとその観察会についてのレクチャーを行い、コウモリ一般の説明をして誤解や偏見を解く努力する。
また、バットディテクターを使った観察のおもしろさについても説明し、実際に姿が見えなくともコウモリの活動が分かるおもしろさ等についても説明するとよい。
- (B):観察のマナーについての説明
観察会を行う場所が、他人の所用物であったりまたはその近くである事が多いので他人の所有地であることに配慮した工夫をする。
- (C):危険な場所や交通事故等への配慮を説明する
- (D):保険には必ず加入してもらうよう、受付等で人数(氏名)等の掌握をする。
- (E):野生の姿を見せてもらうのだから、出来る限りこちら側の影響を少なくする工夫をして観察する旨を説明する。
(例:大声や奇声等をあげたりしない。周りの自然物等を見やすくするためなどの目的で改変しない。直接ライトを当てない。等々)
「3」:野外での観察会
- (A)・洞窟や樹洞近くでの出洞・帰洞等の観察の場合
- 1・コウモリの出入りする場所に、近づきすぎない。最低でも10mは離れて観察をする。
- 2・観察の際には直接ライトを当てず、赤いフィルターをつけたライトや赤外線カメラなどを用いるなど工夫をする
- 3・大きな声を上げたり、騒音等を出して脅かさない。
- (B):nightroostや電灯付近等での観察会の場合
- (C):川岸や草原等での観察会の場合
- 1・観察の際には直接ライトを当てず、赤いフィルターをつけたライトや赤外線カメラなどを用いるなど工夫をする
- 2・大きな声を上げたり、騒音等を出して脅かさない。
「4」:洞窟・トンネル等内部での観察会
これについては現時点では、以下(A〜C)の理由から「コウモリの会後援」の使用は認められません。
- (A):重大事故発生時の責任
万が一の場合の事故(落盤・墜落等)での、人的・社会的被害が大きすぎると考えられるため。いずれの場合でもコウモリの会として責任をとりかねるため。
- (B):コウモリよりの感染症の危険とそれに対する社会的反応の大きさを考慮して
海外では、コウモリの生息する洞窟に入ることなどによる病気の感染が報告されています。
幸い現在まで日本ではそのような報告はありません。しかし、近年多くの外国の野生生物が輸入されていることから、それらとともにコウモリの生息環境を好む病原菌等が国内に侵入するとも限りません。
万が一このような形でコウモリよりの感染が報告されれば、現在の日本の状況では、コウモリが大事か人間が大事か的議論になってしまい、コウモリ保護の活動に冷や水をかける事態になりかねないため。
- (C):ディスターブの甚大さ
洞窟は基本的にコウモリの隠れ家であることから、侵入者に対しては最悪の場合隠れ家放棄となりかねないため。
これではコウモリ保護のためにやっていることが、その逆の行為となってしまうため。
観察会では、あえて隠れ家に入らなくとも、コウモリへの理解を進めることは可能と考えるため。
また、出産期や冬眠期のコウモリへのディスターブは、そこのコウモリ自体の生存を脅かす恐れがあるため。
3・「コウモリの会後援」の取り方
(A):手続き
以上2の「1」〜「4」のことに従ってコウモリの会会員が行おうとする観察会については 、以下の「様式1」で事務局または担当評議員に申請をして下さい。
申請があった場合、事務局または担当評議員は会長に連絡し、評議員会の開催を要請する。評議員会(MLなどで代用することもあり)で検討した後、会長が申請者に結果を遅くとも1ケ月前までに連絡するものとします。
(B):申請は、少なくとも実施の2ヶ月前までにする事を原則とします。
(C):後援申請及びその使用について、一切の料金の徴収はしません。また、後援に際し、現時点では助成は行えません(補助金等がとれた場合については、その内容について(機材等の貸し出しなど)今後検討します。)。
(D):観察会実施に際しての諸々の問題に対しての責任は実施母体にあり、コウモリの会は一切責任を負いません。
(E):観察会実施後は、速やかにその報告書(特に様式は定めません)をコウモリの会事務局を提出してください。
※様式1(郵送でもe-maiでも申請可能)
「コウモリの会」後援申請書
申請年月日
コウモリの会会長殿
実施団体名
実施代表者名と連絡先(住所:電話・FAX番号:あればe-mail)
勤務先(住所:電話・FAX番号:あればe-mail)
コウモリの会版「コウモリ観察会実施ガイドライン」に従って、以下のようにコウモリ観察会を実施しますので、「コウモリの会後援」の使用許可を申請します。
1 主催:
2 共催:(あれば)
3 後援:(あれば)
4 実施年月日時間(時間帯)(複数回ある場合は、まとめて同じ申請書に記入する)
5 実施場所
6 保険の概要:
7 募集対象者とその人数
8 観察対象コウモリ種名
9 実施の概要
10 その他
11 案内チラシ等がある場合は添付して下さい。
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4・適用範囲
本ガイドラインは、「コウモリの会後援」を必要とする観察会についてのみ適用されます。
なお、当然ですが本ガイドラインは、「コウモリの会後援」を必要としないで行われる観察会の内容や実施の規制をしようとするものではありません。
同様に、研究者が行う研究や研究者育成のためのセミナー等についてもその内容や実施について規制しようとするものではありません。
「参考」
・観察会の際に加入できる保険の例
「参加者に対する保険」
・レクレーション保険としていろいろな保険会社が、プランを持っているようです.
ある会社では一人1回100円で死亡約3000万円、入院1日1万円程度(180日間まで)のようです.
「実施者に対する保険」
ボランティア活動保険(パンフレットと問い合わせした回答より)
・一人年間300円の掛け金で、傷害部分(ボランティア自身のケガ)最高1115.3.万円と賠償責任部分(活動中他人の身体・財物に損害を与えた場合)最高3億5000万円がセットで保証される。
・開催地の市町村・都道府県の社会福祉協議会に連絡をして認められれば、保険には入れるそうです。(野鳥観察会など非営利活動ならばまず認められるだろうとの事です。)
実は、「コウモリ観察会」と称して行われているものの中に、研究者のフィールドと知りながら一般の人を洞窟に入れている例や、コウモリの捕獲には環境庁または県の許可がいるにもかかわらず捕獲許可なしで捕獲して見せている例、などが報告されています。
このような(1)違法行為、(2)コウモリ自身への悪影響、(3)観察者自身への危険性、(4)保護研究活動への妨害をなくすためにもこのような例を他にもご存知の方はお知らせください。
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