「新石垣空港整備事業に係る環境影響評価方法書への環境保全の見地からの意見書」
「新石垣空港整備事業に係る環境影響評価方法書への環境保全の見地からの意見書」
2003年2月7日発送
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沖縄県知事 稲嶺惠一 殿
提出者 コウモリの会
会長 山本輝正
事務所 神奈川県逗子市久木8−20−3
新石垣空港整備事業に係る環境影響評価方法書への環境の保全の見地からの意見書
新石垣空港整備事業に係る環境影響評価方法書について、環境の保全の見地から次の
とおり意見をのべます。
意見の要旨
1・約3000頭のカグラコウモリ(絶滅危惧TB類)についてのこれまでの調査結果及び
今後の調査方法についての記述がありません。調査方法については環境検討委員会で十
分検討をした上で、「方法書」に記載してください。
2・この約3000頭のカグラコウモリの調査は、数年をかけて十分行ってください。
3・以上をふまえて、空港が建設された場合の工事期間及び空港運用後にもこの約3000
頭のカグラコウモリが、影響を受けずに生存し続けられることが確実な空港建設計画と
なるよう検討してください。
4・これまでのA〜C洞窟の調査結果をふまえて、コウモリ保護のための十分な対応策
を検討してください。
5・工事期間及び空港運用後の騒音や震動に対するコウモリ保護のための十分な対応策
を検討してください。
6・石垣島には沖縄県希少種のヤエヤマオオコウモリが生息していますが、これに対す
る十分な調査及び対応策を検討してください。
7・環境影響評価法が制定されて誰でも意見を出せるようになったのですから、今後は
環境影響評価法に基づく縦覧は、県外の沖縄県事務所など又はHPで縦覧できるように
して頂くよう要望します。
意見の理由
1・について
2002年の4月16日に開かれた第6回環境検討委員会の場において、空港予定地内に新た
な洞窟とそこに生息する約3000頭のカグラコウモリ(絶滅危惧TB種)が発見されたこ
とが報告されております。
これは第7回新空港環境検討委員会についての2003年1月22日付の地元新聞(八重山毎
日新聞、琉球新報、沖縄タイムス)にも「生息数が3000頭だった場合には『国内最大の
ねぐらである西表島大富第1洞くつに次ぐ多さ。石垣島に生息するカグラコウモリの生
活史において何らかの重要な位置づけを持つものと思われる』として、通年的な個体数
の変動やその変動理由を調査する必要性を指摘した。」と掲載されております。
@方法書を見ますと、昨年3月に確認されていたのにもかかわらずこれに関する記述が方
法書にありません。「項目・手法」は、方法書を中心に行われるので、重要な欠落であ
ると指摘せざるを得ません。
Aこの約3000頭のカグラコウモリに対する調査方法は、どのようなものにされる予定な
のかについても方法書に記述がありません。これについても、重要な欠落であると指摘
せざるを得ません。
Bまたそれは、今後どこでどのように検討をされのですか、その予定はあるのですか。
第6回環境検討委員会で生息が発見された後、今回の第7回環境検討委員会までに、検
討された会が開かれていないと考えられますが、いかがでしょうか。重要な欠落と考え
られるため、以上@、Aについて、環境検討委員会で十分検討した上で、改めて方法書
を作成してください。
2について
これは、新聞記事にもありましたように、『石垣島に生息するカグラコウモリ「個体
群全体(コウモリの会追加)」の生活史において何らかの重要な位置づけを持つものと
思われる』だけでなく、近隣の島々間との移動があるとすれば『日本産カグラコウモリ
個体群全体に対して、重要な位置付けにあること』が十分予想されます。
ここ(D洞窟)のカグラコウモリに対する対応を誤れば、石垣島のカグラコウモリ個
体群の崩壊・絶滅を招くだけでなく、近隣の島々を含んだ日本産カグラコウモリ全体の
個体数減少・絶滅を招くおそれがあるからです。
そこで環境検討委員会で十分検討した上で、少なくとも以下の調査を実施してくださ
い。
@・このカグラコウモリ約3000頭が、確認されたD洞窟を1年を通してどのように
(冬眠場所や繁殖場所などとして)利用しているのかについての調査。
あわせて、D洞窟がどのような広がりを持ち、空港建設によって洞内の微気象にどの
ような影響を及ぼすかを調査する必要がある。
A・これら3000頭のカグラコウモリが、1年を通して石垣島島内をどのように移動を
して、石垣島各地の洞窟を利用しているのかについての調査。
B・ また、このカグラコウモリの移動が近隣の島々との間で行われているのかどうか
についての調査。
C・カグラコウモリの移動が近隣の島々間で行われている場合、その時期は何時であ
るのかについて、また日本産カグラコウモリ個体群におけるこの移動の重要性はどの程
度であるのかについて(遺伝子交流等を含めて)、さらにどのような意味を持っている
のかについての調査
D・約3000頭のカグラコウモリが採餌している採餌場所はどこで、餌量としてどの程
度を必要としているのかについての調査
E環境省の報告書(生物の多様性分野の環境影響評価技術(V)−環境保全措置・評
価・事後調査の進め方について)に以下のようにあります。
「 なお、生態系に関する情報は、四季を通じた複数年の調査が必要なものがあるなど
時間をかけないと明らかにならない場合が多いことに留意が必要である。」
以上を十分ふまえて、四季を通じた複数年の調査の実施を要望します。
3について
@カグラコウモリが、影響を受けずに生存し続けられるように、どのような配慮をさ
れる予定ですか?そのためにどのような調査をされる予定ですか?
つまり、影響に対して取る環境保全措置について「回避」、「低減(最小
化)」、 「代償措置」への考えと予想される内容を含めて公表してください。
また、今後保全措置の元になった、調査結果を公開して下さい。
A空港建設工事中及び空港運用後にも、このカグラコウモリのモニタリング調査を実施
されますか?
B工事途中に影響が出ていると判明した場合、どのような対応をされる予定ですか?
C空港運用後に影響が出ていると判明した場合どのような対応をされる予定ですか?
D環境省の報告書(生物の多様性分野の環境影響評価技術(V)−環境保全措置・評
価・事後調査の進め方について)に以下のようにあります。
「事業の実施に際しては、事業を計画する当初の段階から環境保全への配慮が検討さ
れるのが通常である。事業の内容によっては、環境影響評価の手続きを開始する以前に
環境保全対策が具体的に検討される場合も多い。事業計画の熟度が高まってしまった段
階で環境保全対策の検討に取りかかったような場合には、適切な対策が組み込まれず、
環境への重大な影響が懸念される事態も予想され、環境影響評価全体のやり直しや、事
業計画そのものの大幅な手戻りを生じるおそれがある。このため一般的には、図U−1
−1に示したように事業計画の早期段階で環境保全への配慮の検討が開始されることと
なる。」
以上をふまえて、カグラコウモリの調査は十分に行ってください。
4について
A洞窟・B洞窟・C洞窟の調査は十分に配慮して行って頂いていると思います。
つまり、方法書にありますように、A洞窟では、最大でヤエヤマコキクガシラコウモ
リ(絶滅危惧TB類)が約850頭、カグラコウモリが約90頭、リュウキュウユビナガコウ
モリ(絶滅危惧TB類)が約50頭確認されております。さらにヤエヤマコキクガシラコ
ウモリとカグラコウモリの繁殖場所として利用されていることも確認されています。ま
た、第7回新石垣空港環境検討委員会資料 資料-1(平成15年1月21日)26ページ図
13.2にありますように、C洞窟は、ヤエヤマコキクガシラコウモリ267頭の冬眠場所とし
て利用されていることが確認されています。
繁殖場所や冬眠・休息場所はコウモリの生存にとって極めて重要な場所です。つま
り,一つや二つぐらい洞窟が無くなっても特に影響はないと言えるようなものではない
のです。これに代わる冬眠・休息場所や繁殖場所の洞窟がないか、他に有ってもその洞
窟の収容力(規模や周辺の環境を含めて)が無ければ利用できず、個体数の減少を招い
てしまいます。
以上のことに十分配慮した調査の実施と環境保全の検討を要望します。
5について
空港が出来ることによって発生する騒音や振動が、隣接する洞窟に生息するコウモリ
にどのように影響するかは、実際に実験してみることは不可能なため、その分、慎重に
予測しなればならないと考えます。一般的に考えて、コウモリは音に敏感なので、静か
な洞窟に棲んでいたコウモリが、突然、毎日飛行機の騒音と振動を受けることになると
すると、たとえ洞窟がそのまま残っても放棄してしまうおそれもあると思われます。
この場合、4の理由でも述べましたように、一つや二つぐらい洞窟が無くなっても特に
影響はないと言えるようなものではないので取り返しのつかないことになってしまいま
す。これに代わる冬眠・休息場所や繁殖場所の洞窟がないか、他に有ってもその洞窟の
収容力(規模や周辺の環境を含めて)が無ければ利用できず、個体数の減少を招いてし
まいます。
以上のことに十分配慮した調査の実施と環境保全の検討を要望します。
6について
小笠原ではオガサワラオオコウモリによる農作物に対する食害が発生しています。石
垣島でも採餌場を減らされることによって、同様の問題が発生しないとも限りません。
この様な場合、たとえ希少種であっても害獣駆除の要望が出されてしまうことが心配さ
れます。
このため、空港建設による影響が、ヤエヤマオオコウモリにどのように現れるのかを
含めた調査を実施して、食害のような問題が発生しないようにする対応策の検討を望み
ます。
その際には、ヤエヤマオオコウモリが希少種であることを考慮に入れ、現在の個体数
レベルを確保するのを目指すのではなく、オオコウモリにとって現在以上の良い環境
(空港近隣地にオオコウモリの餌となる植物を含む在来植生の林を数カ所広い面積で作
るなど)を作り出すことによって、個体数が増加するような対応策を望みます。
7について
環境影響評価法の第一条及び第三条、第八条や環境影響評価法施行規則の第二条、環
境省の報告書(生物の多様性分野の環境影響評価技術(V)−環境保全措置・評価・事
後調査の進め方について)の「これらの検討に際しては、環境保全上の課題などを把握
するためにも、できるだけ早い段階から専門家や地域住民などの意見を聴くことが有効
である。」などの記述からも、情報提供の方法等に対して十分配慮してください。
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以上及び以下のHP等を参考にされて皆さん各自のの意見考えを入れて、提出してくだ
さい。よろしくお願いします。
<<アセス学会HPに新石垣空港方法書評>>
環境アセスメント学会ホームページに新石垣空港方法書 に対する評が掲載されていま
す。転載自由とのことなので、ご紹介します。
URLは下記のとおりで、「コミュニケーション」中の「論説・投稿」の中に
「新>石垣空港のアセス手続きが始まった」という題で載っています。
http://www.jsia.net/
『白保メール』ホームページに新石垣空港方法書抜粋が掲載されています。
http://www1.ocn.ne.jp/~shiraho/
関係法令(環境影響評価法及び同施行規則など)
http://www.env.go.jp/hourei/index.html
新石垣空港環境影響検討委員会の過去の議事録(第6回目まで有ります。最新の第7回の
はまだ掲載されていません)
http://www.pref.okinawa.jp/shin-ishigaki/6-kankyo/kankyo.html
なお、関係の資料収集等でお世話になりました関係諸団体、関係諸氏にはこの場を借
りてお礼を申し上げます。
発送先は、以下の内のいずれかに2月12日締め切りです。
@沖縄県土木建築部新石垣空港建設対策室 沖縄県那覇市泉崎1‐2‐2
A沖縄県八重山支庁新石垣空港建設課 沖縄県石垣市字真栄里438‐1
B石垣市役所新空港建設推進課 沖縄県石垣市美崎町14番地
C竹富町役場企画課 沖縄県石垣市美崎町11番地
DWWFジャパン・サンゴ礁保護研究センター(しらほサンゴ村)
沖縄県石垣市字白保118
なお、ひょっとして方法書に記述のないD洞窟については無視されてしまう可能性が
あるとの指摘より要望書を作成してこれも提出しました。
意見書と同文ですがお知らせします。
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沖縄県知事 稲嶺惠一 殿
提出者 コウモリの会
会長 山本輝正
事務局 神奈川県逗子市久木8-20-3
「新石垣空港整備事業予定地に隣接するD洞窟についての保全対策を求める要望書」
2002年の4月16日に開かれた第6回環境検討委員会の場において、空港予定地内に新た
な洞窟とそこに生息する約3000頭のカグラコウモリ(絶滅危惧TB種)が発見され
たことが報告されております。
これは第7回新空港環境検討委員会を報告する2003年1月22日付の地元新聞(八重山毎
日新聞、琉球新報、沖縄タイムス)にも、「生息数が3000頭だった場合には『国内最大
のねぐらである西表島大富第1洞くつに次ぐ多さ。石垣島に生息するカグラコウモリの
生活史において何らかの重要な位置づけを持つものと思われる』として、通年的な個体
数の変動やその変動理由を調査する必要性を指摘した。」と掲載されております。
(1)環境影響評価方法書を見ますと、昨年3月に確認されていたにもかかわらずこれに
対する記述が見られません。「項目・手法」は、方法書を中心に行われるので、重要な
欠落であると指摘さざるを得ません。
(2)この約3000頭のカグラコウモリに対する調査方法は、どのようなものにされる予
定なのかについても方法書に記述がありません。これについても、重要な欠落であると
指摘さざるを得ません。
(3)またそれは、今後どこでどのように検討をされるのですか?その予定はあるので
すか。
第6回環境検討委員会で生息が発見された後、今回の第7回環境検討委員会までに、検
討された会が開かれていないと考えられるのですが、いかがでしょうか?。重要な欠落
であると考えられますので、以上(1)、(2)について、環境検討委員会で十分検討
した上で改めて方法書を作成してください。
(4)この約3000頭のカグラコウモリの調査は、数年をかけて十分行ってください。
これは、新聞記事にもありましたように、『石垣島に生息するカグラコウモリ「個体
群全体(コウモリの会追加)」の生活史において何らかの重要な位置づけを持つものと
思われる』だけでなく、近隣の島々間との移動があるとすれば『日本産カグラコウモリ
個体群全体に対して、重要な位置付けにあること』が十分予想されます。
ここ(D洞窟)のカグラコウモリに対する対応を誤れば、石垣島のカグラコウモリ個
体群の崩壊・絶滅を招くだけでなく、近隣の島々を含んだ日本産カグラコウモリ全体の
個体数減少・絶滅を招くおそれがあるからです。
そこで環境検討委員会で十分検討した上で、少なくとも以下の調査を実施してくださ
い。
@・このカグラコウモリ約3000頭が、確認されたD洞窟を1年を通してどのように
(冬眠場所や繁殖場所などとして)利用しているのかについての調査。
あわせて、D洞窟がどのような広がりを持ち、空港建設によって洞内の微気象にどの
ような影響を及ぼすかを調査する必要がある。
A・これら3000頭のカグラコウモリが、1年を通して石垣島島内をどのように移動を
して、石垣島各地の洞窟を利用しているのかについての調査。
B・ また、このカグラコウモリの移動が近隣の島々との間で行われているのかどうか
についての調査。
C・カグラコウモリの移動が近隣の島々間で行われている場合、その時期は何時であ
るのかについて、また日本産カグラコウモリ個体群におけるこの移動の重要性はどの程
度であるのかについて(遺伝子交流等を含めて)、さらにどのような意味を持っている
のかについての調査
D・約3000頭のカグラコウモリが採餌している採餌場所はどこで、餌量としてどの程
度を必要としているのかについての調査
E環境省の報告書(生物の多様性分野の環境影響評価技術(V)−環境保全措置・評
価・事後調査の進め方について)に以下のようにあります。
「 なお、生態系に関する情報は、四季を通じた複数年の調査が必要なものがあるなど
時間をかけないと明らかにならない場合が多いことに留意が必要である。」
以上を十分ふまえて、四季を通じた複数年の調査の実施を要望します。