コウモリの会ホームページ

川辺川ダムへの質問書

※これについては、いまだ回答がない(平成15年9月時点)



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   十分なコウモリ調査実施の要望書

  私たちコウモリの会(会員約400名)は、以下の理由より、川辺川ダム建設に
対しての事前の環境アセスメント調査で、十分なコウモリ類の調査を行われるように、
配慮して実行される事を要望します。

 川辺川工事事務所のHP(環境調査報告書)によれば、5種のコウモリ類(キクガシ
ラコウモリ、コキクガシラコウモリ、モモジロコウモリ、ユビナガコウモリ、テング
コウモリ)の生息が確認されています。このうち「環境省のレッドリスト見なおし」
に掲載されているのが、テングコウモリ(絶滅危惧U類)、熊本県のレッドデータブッ
クに記載されているのが、コキクガシラコウモリとモモジロコウモリです。いずれも、
その重要性につきましては理解をされている事と思います.

 さて、私どもコウモリの会が要望するコウモリの調査について、ご説明いたします。

(1)コウモリの生態に詳しく、保護活動(保護対策)にも参加経験のある専門家に
よる調査を再度行ってください。

 コウモリの生態の知識や同定能力なしでは、有効なコウモリの調査は無理です。コ
ウモリは一般に生態などがあまり知られていないため、その調査にはかなりの専門性
を有する人か団体でないと無理です。 例えば、性や年齢の判別が不明な「〇〇コウ
モリが100頭いた」だけの調査や報告では、川辺川ダム周辺の鍾乳洞を3種のコウ
モリがどのように周年移動し利用しているのかが分かりません。そのため、このよう
な利用がされているので、これこれの対策が必要といった判断のしようがありません。

 例えば調査報告書の疑問点として

 (A)環境調査報告書では、周辺に大小10箇所程度の鍾乳洞が存在するとしながらな
ぜ1 箇所(九折瀬洞)しか調査をしていないのですか?

コウモリは種や性・齢および季節により利用する鍾乳洞を変えることが知られていま
す。このため船越・入江(1987)にある様に「数箇所の調査を周年にわたり」行い、
その鍾乳洞間の利用状況を把握しない事には生息調査を行ったとはいえません。コウ
モリは、種それぞれに異なる対応策が必要なはずです。

 (B)環境調査報告書では、昭和43年〜平成10年の間の30年間の平均を出していますが
これに意味があるのですか?

 昭和43年以降からでも、森林の開発等による森林の減少や鍾乳洞の観光化などによ
りコウモリの生息場所や採餌場所の減少による影響が出ているはずです。従って、そ
のような変化を無視した個体数変化を示しても開発による現時点での影響を考慮しう
るデータにはなりえません。


(2)調査の際に、ディスターブに十分配慮できる知識と経験の積んだ方に調査をお
願いしていただき、調査によるディスターブに配慮してください。  コウモリは、
観察等による人のディスターブを受けやすく、特に冬眠期(冬眠期に冬眠から何度も
起こされると、冬眠用のエネルギーをなくして冬眠失敗で死亡してしまう可能性が高
くなります.)、出産期(ショック等で早産してしまい、子どもが親にしがみつけな
くなる事で落下して死亡する)、保育期(危険を察知し、ストレスから授乳停止や保
育場所を放棄してしまう可能性が高い)の調査観察には、細心の注意を必要とします。
 以上のことを知らずして調査を行うと、保護のための調査自体がコウモリへの多大
な悪影響となる恐れがあります。従って以上を十分理解した調査の実行を望みます。

 以上を考慮しない調査の実施は、コウモリの生息状況を調査しているのか、人によ
るディスターブを調べているのか分からなくなってしまいます。 実際鍾乳洞での調
査に際して、このような考慮がまったくされず洞窟内にコウモリの生息に障害になる
ものが設置されたりしていると聞きます。これはコウモリを鍾乳洞からコウモリを追
い出す行為をわざとしていると見られかねない行為です。早急に鍾乳洞内に持ち込ん
だものを排出し、専門家の指導を受けて現状回復の措置をして下さい。 また、ディ
スターブの影響で以前よりもコウモリの利用が通常より少なくなっていると思われま
すので、今後、少なくとも半年〜1年(?)は入洞を控え、再調査はその後に行うこ
とを要望します。



(3)ねぐらである鍾乳洞のみでなく、餌場としての周囲の自然環境の変化について
も十分に考慮した対策をお願いします。

 隠れ家としての鍾乳洞のみが問題視されていますが、コウモリの生息には採餌場所
である野外の植生が非常に重要です。つまりどのような植生のところでどのような餌
となる昆虫を食べているかです。 ダム建設で水没する事による採餌場消失も、生息
場所の消失同様にコウモリの生息を脅かすものとなります。措置を考えるためには、
予定地及び周辺でのコウモリの採時場所としての利用頻度や食性等を含めた調査が不
可欠と考えられます。


(4)保護措置には、保護措置の経験のある専門家の意見を十分に取り入れて行って
ください。

 ユビナガコウモリの通路用としてバイパストンネルの計画があるようですが、ユビ
ナガコウモリの飛行特性を十分考慮した構造にしないと作ったけれどもまったく利用
できない事になりかねません。 この意味で、九折瀬洞保全対策検討会にコウモリの
保護措置に経験のある研究者が含まれていない事は大いに問題であると考えられます。
 また、これまでに保全のためにどのような案が出され、どのような理由から現在の
保全措置に至ったのか、その理由と経緯を提示してください。


 以上を考慮された上での十分なコウモリの調査の実施を望みます。

なお、関係諸団体および検討会の委員の方々、マスコミ関係者にも、郵送させて頂く
予定です。

             平成13年11月20日   コウモリの会     
                       会長 山本輝正



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